no-sence of wonders
かごめ*かごめ
 
日常都会にすむ妹尾杏は盂蘭盆に母方の故郷に帰る。
幼い頃から必ず年に一度墓参りに家族と共に山奥にある村へ帰る。
家族と言っても14歳の杏に兄弟姉妹の類いはなく、父母娘のいわゆる核家族なのだが
母親は7人兄弟の6番目なので実家に集まる親類縁者はかなりの人数になる。

都会から見るとそのかなり大きな実家では夜になると2つの大きな居間の間を仕切っている襖がはずされ、
これまた大きな机の上に御馳走が並べられ、大人たちの酒宴が始まる。
子供達は外で誰かが買って来た花火を楽しむのだが、
それも終わってしまうと早々に離れにある部屋に布団を敷いて休んでしまう。
小さな子供達はもうあくびが出ていたりするのだが
中学生ともなるとまだまだ眠くはないものだ。
 
花火の後杏は宴席の賄いを少し手伝っていたが、
それの手も空いたので部屋の隅に腰掛けて休むことにした。
すると杏の従兄弟にあたる高校生の土筆が話し掛けて来る。
大人でもなく子供でもない中途半端な年代はこの2人しかいないので、
大人の輪からも子供の輪からもはずれているのだ。
 
杏は土筆としばらく世間話に興じた後、サイダーを取りに台所へと立つ。
小さい頃から何度も来ているはずの親戚の家だが、
たった年に一度二度来るぐらいなので、はじめは広い家の間取りを思い出せずに迷ってしまう。
いつもその広さを実感させられるのであるが、
宴会の明るい席とは違い廊下はとても暗く、また外はすぐに山中の鬱蒼とした森なのでとても静かだ。
心細くもなってしまう。

やっとのことで台所に辿り着き、急いで居間へ引き返す。
古い家だ。
風が吹いたのか、がたっと家が軋む音に思わず驚かされたり。
何者かが潜んでいるのではないかと思える電気の点いてない暗い廊下が見え、
杏の心中は穏やかではない。
恐怖心が沸き上がり、杏は知らず知らずのうちに早足になっていた。
しかし帰りはもちろん迷いはしない。
居間へと続く廊下を進むに連れあの大人達が楽しそうに騒いでいる声が聞こえてくる。
杏は安堵しながら襖の把手へと手を掛けた。
そのときである。
「かごめかごめが出たぁ!!」
中から叔父の絶叫に近い声が聞こえた。
 
 
この地方に伝わる不思議な現象「かごめかごめ」
夏の夜に古い家で突如発生する。
家の間取りが空間的におかしくなり、大迷宮に変貌してしまう。
1ヶ所に集まっていた人々はその迷宮にバラバラになり
2度と外へも出られず、誰にも会えず、帰って来たものはいない……
杏が出くわした現象は、まさにそれであった。
彼女は暗い迷宮を彷徨い歩き、様々な不思議なものを見る。
妙子と名乗る狐巫女の少女に導かれ
やがて出逢う土筆と3人で迷宮の中心へ向かうことになるが、はたして。

 もともとの発想は筒井康隆の小説「遠い座敷」+ドラえもん「ホームメイロ」から来ているのですが、
冨士弘「迷宮館のチャナ」にも似ている気がする……
と、冷や汗出まくりのドメスティック・ファンタジーですだ。

文章長ぇよ。